研究紹介

研究紹介

形成外科再建手術後移植組織壊死の発生リスク因子と術後機能に与える影響の研究

1.臨床研究について

 九州大学病院では、最適な治療を患者さんに提供するために、病気の特性を研究し、診断法、治療法の改善に努めています。このような診断や治療の改善の試みを一般に「臨床研究」といいます。その一つとして、九州大学病院形成外科では、現在当科で再建手術を受けられた患者さんを対象として、術後成績、手術合併症に関する「臨床研究」を行っています。
 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、平成34年2月24日までです。

2.研究の目的や意義について

 形成外科再建手術は悪性腫瘍切除、外傷などによって生じた組織欠損に対して、整容面の改善、創閉鎖、機能回復を目的に行われます。例えば遊離皮弁で口腔を閉鎖する場合や、食物の通り道を空腸の移植で再建するなどです。また下肢の骨が腫瘍切除により欠損した場合、血管つき骨移植により体重を支え、患肢温存、歩行できるようになるなど、QOLに大きく貢献します。
 皮膚のみの再建は、多くは薄い皮膚(厚さ0.3mm程度)を採取して欠損部に固定するのみで可能です(植皮)。大きな自家組織を移動する際は血流の維持が不可欠で、血管のみ連続させて組織を移動させる方法(有茎皮弁)がありますが、血管の長さによって移動距離に制限がありました。1973年に組織を栄養血管つきで採取し、血管を一度切り離して欠損部に移動してから血管吻合する方法(Free flap、フリーフラップ)が開発され、離れた部位に移植することが可能になりました。このような再建が可能になったことで、今まで切除不能とされていた頭頸部や骨軟部腫瘍が根治的に切除可能になり、生命予後の改善にも貢献しています。形成外科では植皮、有茎皮弁、フリーフラップを組み合わせて組織の再建を行います。
 フリーフラップで再建手術を行う場合、直径1~3mmの血管を、顕微鏡下に縫合して吻合する必要があります。成功率は95%程度で、5%程度(20例に1例)の確率で、血管吻合部に血の固まり(血栓)ができ、それより先に血液が通わない状態が発生します。早期に血栓を除去して再吻合できれば回復できますが、救済手術が不成功に終わった場合は壊死します。また有茎皮弁、植皮も感染などから壊死を生じることがあります。組織壊死は術後機能を低下させ、再手術が必要な場合もあります。
 以上のような、生命、機能に大きく関与する形成外科手術ですが、フリーフラップの本格的普及は1980年代から1990年代にかけてであり、研究も不十分です。また、手術適応となる広範な組織欠損が生じるような重症外傷や、腫瘍切除は発生頻度が低く、治療を行う施設も限られています。そのため、希少な症例を一例一例丁寧に検討して、その知見を蓄積、継承してく必要があります。皮弁壊死の減少と、さらに安全な治療を行えるようになるよう、研究が必要とされています。

3.研究の対象者について

 平成26年2月1 日~承認日まで九州大学病院形成外科にて、腫瘍切除後または外傷後の組織欠損に対して再建術を施行された患者さん750名を対象にします。
 研究の対象者となることを希望されない方は、下記連絡先までご連絡ください。

4.研究の方法について

 この研究を行う際は、カルテより下記の情報を取得します。術前の状態、手術の情報、術後経過(皮弁虚血、感染)と組織壊死の関連を調査し、最終機能に対する影響を明らかにします。

〔取得する情報〕
術前因子
1.術前写真 組織欠損部位 年齢 性別 身長 体重 合併症
TNM分類
T因子:がんの大きさと浸潤 腫瘍のサイズ、進展によりT1、T2以上に分類。サイズの規定は発生部位(咽頭、舌など)により異なります。 N因子:リンパ節転移 所属リンパ節転移が判定できないときはNX、転移なしはN0、転移ありはN1以上に分類。 M因子:遠隔転移 遠隔転移なしはM0、遠隔転移ありはM1以上に分類。
2.血液検査結果(血算、肝機能、腎機能、血糖値、HbA1c)CTによる血管石灰化
手術
3.切除術式 切除時間 出血量 皮弁術式 術中写真 皮弁挙上時間 皮弁縫合時間 虚血時間
術後
4.再手術 術後写真 虚血の発生 感染 デブリドマン
(壊死組織の除去手術:完全に壊死組織を除去できるまでの手術回数)
創治癒期間
5.周術期合併症
機能
6.頭頸部 嚥下機能 嚥下透視検査 食事形態 会話機能
四肢

Musculoskeletal Tumor Society rating scales (MSTS)
骨軟部腫瘍学会が定めたスコア。骨軟部腫瘍切除後の四肢機能を痛み、機能、満足度、装具の使用、可能な作業を各0-5点配点し合計0-30点で評価。
日本整形外科学会スコア
肩、肘、股関節などの各関節を可動域、痛み、日常生活動作、レントゲン評価など0-100点で評価。

5.個人情報の取扱いについて

 対象者の測定結果、カルテの情報をこの研究に使用する際には、対象者のお名前の代わりに研究用の番号を付けて取り扱います。対象者と研究用の番号を結びつける対応表のファイルにはパスワードを設定し、九州大学病院形成外科のインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、同分野の職員によって入室が管理されており、第三者が立ち入ることはできません。
 また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、あなたが特定できる情報を使用することはありません。
 この研究によって取得した個人情報は、九州大学病院形成外科・准教授・門田英輝の責任の下、厳重な管理を行います。

6.試料や情報の保管等について 

〔情報について〕
 この研究において得られた対象者のカルテの情報等は原則としてこの研究のために使用し、研究終了後は、九州大学病院形成外科・准教授・門田英輝の責任の下、10年間保存した後、研究用の番号等を消去し、廃棄します。
 また、この研究で得られた対象者の情報は、将来計画・実施される別の医学研究にとっても大変貴重なものとなる可能性があります。そこで、前述の期間を超えて保管し、将来新たに計画・実施される医学研究にも使用させていただきたいと考えています。その研究を行う場合には、改めてその研究計画を倫理審査委員会において審査し、承認された後に行います。

7.研究に関する情報や個人情報の開示について

 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。
 また、ご本人からの開示の求めに応じて、保有する個人情報のうちその本人に関するものについて開示します。情報の開示を希望される方は、ご連絡ください。

8.研究の実施体制について 

この研究は以下の体制で実施します。

  • 研究実施場所 九州大学病院 形成外科
  • 研究責任者 九州大学病院 形成外科 准教授 門田 英輝
  • 研究分担者 九州大学病院 形成外科 助教 吉田 聖
  • 九州大学病院形成外科 助教 上薗 健一

9.相談窓口について

この研究に関してご質問や相談等ある場合は、下記担当者までご連絡ください。

事務局 (相談窓口)
担当者:九州大学大学病院 形成外科 助教 吉田 聖
連絡先:〔TEL〕092-642-5687 〔FAX〕092-642-5687
メールアドレス:yoshida.sei.294@m.kyushu-u.ac.jp

外来受付時間

初診
8:30-11:00
再診
8:15-17:00 (自動再来受付機)
8:20-17:00 (窓口受付)
休診日
土・日・祝日、年末年始

九州大学病院

〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1
  • 092-641-1151 (代表)
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